昨年の与那国島〜西表島シーカヤック横断。向かい潮、向かい風の中、77kmの距離、22時間漕ぎっぱなしの航行は、今までの人生で1、2を争うほどつらい経験だった。だから漕ぎ終え、西表島に降り立った時の感動は忘れられなかった。
今年の挑戦「宮古島〜石垣島120km」。日本初の遠征。昨年の挑戦と明らかに違うことは判走船なしの挑戦ということ。
10月14日(日)、遠征メンバーとご対面。今回も隊長「八幡暁」のもと、漕げるツワモノ5名が集まったようだ。10月15日(月)AM6:30、今から約100年前の久松五勇士以来の遠征隊が宮古島・久松漁港から石垣島に向けて出航した。波3m、風速10m以上と海上の状況は良くなかった。けれど隊長は「このメンバーならきっと。」と判断し出航を決意したのだった。まずはこの日の目的地・多良間島へ向かった。漕行距離は60km。20kmを過ぎ5mに達するかのような大波が襲いかかる。1艇が沈。大時化の中、無人のカヤックが行き場をなくして木の葉のように舞っている。大急ぎで救出し態勢を整える。しばらくすると、不規則な大波に襲いかかられた隊長・八幡艇も沈。しかし隊長は冷静にカヤックを立ちなおし、みんなの不安を振り払ってくれる。40kmを過ぎ、やや波が一段楽した頃、ようやく多良間島が目視出来るようになった。「もう少し!」みんなで気勢を上げ多良間島へ向かった。そして、出発から約9時間後、多良間島へ到着した。降り立った港で健闘を称えあい、まずは第1ラウンドを制したチームメンバーは祝杯を挙げた。
翌日、海上の状況はさらに悪化しているようで、翌日のアタックに備えるため約5km先の港まで移動するに留まった。
そして10月17日(水)AM6:00、最終目的地・石垣島へアタックを開始した。結局、海上は良くならず一昨日よりも風速が強くなっていた。今回も約60kmの距離、波3m、風速13mの追い風。海上での追い風はもっとも危険な風だった。一昨日よりも難しい航行にメンバーたちは顔を引きつらせる。襲いかかる大波に初めて恐怖を感じた。「怖い!」大声で叫びたかった。大自然の中、ちっぽけなシーカヤックが二本の腕を振り回し進んでいく。気力を失ったら死ぬ。フィニッシュは必ず訪れる。だから頑張ろう。簡単なことだ。出発して40kmを過ぎた。眼前に石垣島が迫って来た。「やった〜!」白波が立っているリーフが見え日本初の「宮古島〜石垣島シーカヤック横断」の成功を確信した。
すべて自分の責任で行動すること。ただし、成功を確信していないとやってはいけないこと。グレートシーマンプロジェクトを決行している隊長・八幡暁。彼の遠征は1回の航行が200km以上、30時間以上漕ぎ続けることもある。けれど決して無理をしない。引きどころを心得ているから。この遠征は彼がいたからこそ成功したことだ。そして心安らぐメンバーたちと一緒に石垣島の地に辿りつけた事は一生忘れないだろう。
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