セルフディスカバリーアドベンチャー マウンテンラン・ペアマッチレース
IN HAKUBA レポート


目標は、観走! 成績や記録だけが全てではない
レポート:廣田直文

 昨年、初めての山岳マラソンとなった白馬ペアマッチ、遠見から見た紅葉と冠雪の赤と白のコントラストが印象的でした。しかし、唐松から八方尾根にかけての下りは、遠見の尾根を走るときに比べ、走ることに集中してしまい、景色を見る余裕がありませんでした。
今回は、昨年見忘れた景色を見ることが、王滝を走り終えて参加を急遽決定した最大の理由でした。

第1ステージ(ジャンプ台→八方尾根:5km)
早朝6時にジャンプ台下をスタートし、八方尾根スキー場のゲレンデを下から最上段まで標高差約1,100mを登ります。どのようなレースでも同じですが、自分の体力レベルに応じたペース配分が必要です。他のチームのことは気にせず、唐松山荘までは体力を温存するように歩き、休憩を小まめに取りながらペースを調整して進みました。
ゲレンデをゆっくりと歩きながら、後ろを振り返ると、雲の切れ間から見える白馬の街並みが徐々に小さくなるのを見ては、自分たちが登っていく高度が高くなっていくことを実感します。
8時過ぎ、制限時間以内に第1テックポイントに到着。そのころトップ・チームは、唐松山荘を通過したと、連絡が入りました。


第2ステージ(八方尾根→五竜山荘:7km)
さらに800m登りますが、唐松山荘から五竜山荘にかけては、コース最大の難所、“牛首の鎖場”があります。
八方尾根では、白馬の山並みや美しく色付いた紅葉を満喫しながら唐松山荘を目指しました。
11時過ぎ、下ってくる登山客の方に励まされながら、唐松山荘に到着。最大の難所に備えて休憩を取って体勢を整えました。五竜山荘までは、馬の背を200m下って、再度100m登ります。手が届くかのように見える五竜岳が、なかなか思うように近付かないため、精神的にも辛い区間でもあります。
難所を無事に通過した安堵感からか、徐々に景色を楽しむ余裕も出てきました。登山道の脇の水溜まりに、オタマジャクシやアメンボを見つけましたが、オタマジャクシの存在にはある程度理解できるのですが、アメンボはどのようにして2000mを越える水溜まりを見つけ飛んできたのでしょうか?何方か、アメンボについて詳しい方、教えていただけないでしょうか。
徐々に雨粒がはっきりとしてくる天候のなか、13時過ぎ第3チェックポイントに到着しました。



第3ステージ(五竜山荘→小遠見:5km)
五竜山荘に到着後、宿泊先の民宿かじやの女将さんが、早朝から朝食を準備して頂いた上に、レースのために作ってくれたおにぎりを食べることにしました。スタートしてから7時間、これまで補助食品しか口に入れていなかったため、口の中から胃袋に至まで、おにぎりの食感に幸せを感じつつ食べ尽くし、観走に向けて気合いを入れ直しました。
スタート直前、麓から沸き立つ雲に覆われると、ついに雨は本降りとなりました。
スタート直後の白岳で、目の前をバタバタと羽音を立てて横切る鳥にビックリしてしまいました。よく見ると写真でしか見たことのない雷鳥でした。2時間近くも、人の気配がなかったのですから雷鳥も油断していたのでしょうか。
白岳から西遠見山まで一気に下ると、大遠見山から小遠見までは、小刻みにアップダウンが続きます。道幅は狭い上に、ぬかるんだ所が多く、思うようにペースを上げることはできません。また、八方尾根と同様に紅葉が美しいのですが、周囲を雲で覆われているため、幻想的ではあるものの、見通しが悪く自分達の走っている位置が分からないことからも、精神的に辛い区間となりました。
小雨降りしきる中、3時過ぎに小遠見に到着しました。


第4ステージ(小遠見→五竜スキー場:5km)
小遠見から地蔵の頭までは、整備されたトレッキング・コースであり、チームにとって唯一の快適に走れた区間でした。
雲の切れ間から登ってきた八方尾根の稜線が見えると、自分たちが登ってきた高さを実感します。しかし、まだまだゴールまでは、下らないといけないことも意味してしました。
地蔵の頭からは、再度、ゲレンデを通ります。ゲレンデ特有の急斜面と、取り付け道路の路面は岩がゴロゴロとしていて、油断すると捻挫の可能性もあります。また、制動のため膝にかかる負担も大きく、初めて挑戦したペアの膝を保護するために、登りで使用した牽引ロープを“制動ロープ”として、体重のある自分が後ろから引っ張る隊形でゴールを目指しました。九十九折りの道を下りながら、ゴールは、まだかまだかと言いながら下っていきました。とおみゲレンデの上から見ると、うっすらとエスカル・プラザ前のゴール・ゲートが見えました。ゲートは既に撤収されているのではないとか心配していましたが…。ゴール・ゲートを無事通過できると、これまでの疲労も忘れ去り、今まで走ってきた感動が倍増されるものです。特に7月の王滝では、通門できなかった分、喜びも一入です。


最後に
唐松山荘からは、ほぼ山は貸し切り状態でした。チーム名のとおりスタートからゴールまで、完全に“けつもち”をキープし、コース上の利用できる施設を全て利用しての10時間40分。記録だけを見ると自分でも長いな〜と感じますが、自分では100%満足できた観走だったと思います。
また、最後尾だったためか登山客の方々を含め、多くの方々から心暖かいお言葉をかけて頂きました。最後に休憩で立ち寄ったテレキャビンのアルプス平駅の職員の方からも、タイミング良く撤収のために降りるゴンドラが頭の上を通過する時、扉を開けてまでも応援してくださいました。このような体験は、最後まで諦めずにゴールを目指す者達だけの特権なのかもしれません。
最後に、雨の中、前のチームが通過して2時間後に我々が通過するという状況の中を待って頂いたスタッフの方々に感謝します。ありがとうございました。


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