2022 OSJ ONTAKE100


レポート

帰ってきた「ONTAKE100」

 2020年、新型コロナウィルス感染拡大の状況を踏まえて中止。2021年、大会延期。そして2022年の今年。今大会も開催されるかどうか、ギリギリまで予断を許さなかった。2021年夏の豪雨災害により、コースである林道の複数箇所が崩落し、復旧までかなりの時間を要する状況になっていたからだ。だが、開催を待ち望んでいる多くの選手の期待に応えるため、王滝村に隣接する上松町の国有林林道を活用する新たなコースを導入。ワンウェイで100kmのコースを設営することで、何とか開催にこぎつけることができた。
 長野県王滝村。トレイルランニングだけでなく、マウンテンバイクやマラソンなどのレースが行われてきたこの地は、「アウトドアスポーツの聖地」と呼ばれる。2022年7月、3年ぶりに村に選手たちが帰ってきた。

ひたすらガレた林道を走る

 新コースではステージ1とステージ2の2つのステージを走る。
 ステージ1は、松原スポーツ公園をスタートし、木曽駒ヶ岳の西に位置する上松町の国有林林道を駆け巡ったのちに、一気に氷ヶ瀬まで下ってスタート地点の松原スポーツ公園に戻ってくる。
 ステージ2は、松原スポーツ公園をスタートし、御嶽山山麓の南側を流れる濁川を越え、自然湖を通って滝越から再び山の中に入り、ゴールの松原スポーツ公園を目指す。
 100kmはステージ1からステージ2へ、100マイルはステージ1を2周してからステージ2に入るというコースになっている。いずれにしても、コースのほとんどはガレた林道。気持ちのよいふかふかのトレイルも、テクニカルな岩場も、思わず立ち止まりたくなるような絶景もなく、ひたすら単調な道を走る。そして、唯一の楽しみのエイドはほぼ水のみの提供。だからだろうか、誰が言いだしたかわからないが、いつからか「ONTAKE100」は「走る座禅」と呼ばれるようになった。

夜スタート、雨の中の林道をゆく

 7月16日、午後8時。まずは100マイルレースがスタート。今でこそ、100マイルレースは一般的になってきたが、日本における100マイルレースの先駆けとなったのが、この「ONTAKE100」なのだ。参加資格は過去に「ONTAKE100km」のレースを14時間以内で完走した者のみ。今回は150名の強者たちが100マイルレースに挑んだ。
 1084名が出走した100kmの部は深夜0時スタート。それまで会場で仮眠をとる選手もいたが、あまり寝られなかったという人が大半だったようだ。
 この、夜スタートというのが「ONTAKE100」の特長でもある。 ヘッドライトを付けて走るランナーの列は、まるでホタルのようで幻想的ですらある。
 この時期、夜が明けるのは早朝4時半ごろ。ずぶぬれになったランナーはステージ1を走り、両レースの第1関門である松原スポーツ公園を目指す。100マイル部門はステージ1をもう1周、100km部門はステージ2へと向かう。ただひたすら黙々と、修行僧のように林道を走っていく。

「走る座禅」を制した強者たち

 7月17日、午前9時前。100kmの選手がゴールに入ってきた。トップに輝いたのは万場大選手30歳。100kmを走ってきたとは思えないほど余裕の表情だ。「9時間切りが目標だった」という通り、8時間58分38秒でゴール。万場選手がゴールした約40分後、2位に入ってきたのは河崎鷹丸選手29歳。「毎週木曜日に東京・お茶の水の明治大学の近くにある男坂の階段で仲間と一緒に上り坂の練習をしてきた」と話す河崎選手は9時間40分39秒でゴール。3位に入ったのは、トレランを始めてまだ2年ほどという岡田裕也選手。「まさに走る座禅でした」としみじみと話す岡田選手は46歳。時間は9時間53分13秒。自身「遅咲き」と話すが、まだまだこれからが期待できそうなランナーだ。
 一方、超過酷な100マイルレースを制したのは丹羽望選手43歳。タイムは17時間32分45秒。2位には中根孝太選手37歳、3位には田中裕康選手48歳が入った。
 100kmの完走率は72%、100マイルの完走率は41%。7月17日午後7時、過酷なレースは静かに幕を閉じた。

取材・文/高橋 寿子

【100kmリザルト】
総合男子 総合女子
総合順位 氏名 記録 総合順位 氏名 記録
1 万場 大 8:58:38 1 安田 彩子 11:40:38
2 河崎 鷹丸 9:40:39 2 太田 美紀子 11:52:38
3 岡田 裕也 9:53:13 3 浅井 美奈子 12:45:50
4 荒川 純 9:57:41 4 河原 愛美 13:05:47
5 杉本 諭 9:57:41 5 佐藤 真琴 13:30:20
■DATA/出走者数1084名、完走者数785 名(完走率72%)

【100マイルリザルト】
総合男子 総合女子
総合順位 氏名 記録 総合順位 氏名 記録
1 丹羽 望 17:32:45 1 國分 さやか 21:38:12
2 中根 孝太 18:06:52 2 西尾 野絵 22:23:33
3 田中 裕康 18:34:42 3 堤 智美 22:43:56
4 小島 弘道 18:49:23 4 小山田 江美 23:29:47
5 水越 友洋 19:18:15 5 關 利絵子 23:30:04
■DATA/出走者数150名、完走者数62名(完走率41%)


photographer Akihiko Harimoto