源泉かけ流しの湯が楽しめる
福島の名湯、岳温泉
2023年9月2日、OSJ安達太良山(あだたらやま)トレイル10Kレースが行われた。
気温35℃以上の猛暑日が続いた2023年、夏の東京。8月が過ぎても、その暑さは衰えることがなかったが、ここ安達太良の麓にある岳(だけ)温泉は、まるでリゾート地のような、さわやかな空気に包まれていた。
福島県二本松市岳温泉。平安時代から京の都でも、その存在が知られていた開湯1200年の歴史ある温泉だ。この岳温泉の特長のひとつが、源泉から温泉街までの約8kmにも及ぶ引き湯の距離の長さ。安達太良山の標高1500m付近の源泉から、山肌を伝う湯樋(ゆどい)を通り、40分かけて温泉街まで湯を引いている。ほのかに硫黄の香りがする岳温泉のお湯は、源泉から温泉街まで流れてくる間に管の中で自然に湯もみされ、単純酸性泉(*1)でありながら、肌にやさしい湯となって運ばれてくるのだ。
この引き湯を支えているのが、湯守(ゆもり)の存在だ。湯守は、源泉と引き湯に関わることすべての管理を任されており、この湯守文化が評価され、岳温泉は「温泉総選挙2022」(*2)の「歴史・文化部門」でみごと第2位を受賞した。
コロナが落ち着いた今、
マスク着用なしでスタート!
レース当日は快晴の朝を迎えた。10km(実際は約14km)と距離が短いため、スタートは午前10時とやや遅め。岳温泉からはシャトルバスが出ており、7kmほど離れたスタート地点のあだたら高原スキー場まで送迎してくれる。
スタート15分前にはスタートセレモニーが行われ、旅館の女将でもある岳温泉観光協会会長二瓶(にへい)明子さんの挨拶があった。
ここで二瓶さんが言っていたのが、「昨年はマスクを付けてスタートを待っていたのが、今年はマスクなしで」という言葉。
そうだった。1年前はコロナ対策として、スタート地点でのマスク着用が義務づけられていたのだ。それが、コロナが収束に向かいつつある今年は、マスク着用なしの、ふだんのスタート風景が展開された。そう、そう、レースはこうでなくっちゃ!
短パンボーイズ&ガールズが
安達太良山山頂を目指す
午前10時。290名の短パンボーイズ&ガールズの選手たちが一斉にスタートした。
スタートしてまず馬車道と呼ばれる林道に入るが、最初は道が狭いのでちょっとした渋滞になる。40分ほど走ればしだいに前方が開け、登山道の取り付き地点に着く。ほんのりと硫黄の香りがする大きな石が重なる道を上っていくと、右手に黒壁のくろがね小屋が見えてくる。
現在、くろがね小屋は老朽化のため建て替え中。よってトイレが使えない。トイレが心配な人は、スタート地点で販売している簡易トイレを持っていくことが推奨された。トイレは観光協会のほうでテントを用意してくれているので、そこで使うことができる(なお、使用した簡易トイレはその場で捨てずに、持ち帰ること)。
小屋を過ぎると、視界が開け、安達太良山周辺の山々が姿を現す。前方に見えるのは安達太良山。山頂を目指して滑りやすいザレた尾根道を上っていく。
しばらく上ると、安達太良山山頂に到着。広々とした山頂付近は、レースでなければ、写真を撮ったり、お弁当を広げたりしたい場所だ。なお、山頂周辺は歩行区間になっているので、決して走らないように。
山頂を後にして、今度はもと来た道とは異なる道を下る。滑りやすいので足元に注意しながら下っていき、馬車道にぶつかったら、あとは林道を下るだけだ。
最高齢80歳の佐藤さんも
無事ゴール
スタートから1時間20分後、トップで戻ってきたのは、北海道から来た小笠原航洋選手。25歳の若き公務員ランナーだ。
「OSJのレースは初めてだったのですが、マーキングをはじめ、運営がしっかりしていて、不安なく走れました。明日の50Kにも出るのですが、そこでも上位を狙いたいと思います」
と力強く語ってくれた。
その後、ゴール会場では制限時間の午後2時までに、次々とランナーが入ってきた。最高齢の佐藤隆一さん(*3)も、3時間58分49秒と4時間の制限時間ギリギリだったが、みごとゴールした。
お天気に恵まれた今年のレース。トレランビギナーにもおすすめの10Kレースは、やっぱり楽しい!
【注釈】
*1 殺菌力・抗菌力が高いことで知られる酸性の強い温泉。慢性皮膚炎やアトピーなどに効果があるほか、酸性成分がお肌の角質を溶かすことから、美容効果が高いことでも知られている。
*2 国民による応援投票で選ばれる、温泉地活性化のためのプロジェクト。岳温泉が1位に輝いた「歴史・文化部門」のほか、「絶景部門」、「リフレッシュ部門」、「うる肌部門」など9つの部門がある。
*3 御年80歳、安達太良山10Kレースには連続12回参加。詳細は2022年のレポートを参照。
取材・文/高橋 寿子
【2023 OSJ安達太良山トレイル10Kリザルト】
男子 |
女子 |
総合順位 |
氏名 |
記録 |
総合順位 |
氏名 |
記録 |
1 |
小笠原 航洋 |
1:21:56 |
1 |
冨澤 いずみ |
1:42:24 |
2 |
手嶋 真紀 |
1:23:20 |
2 |
平田 ひより |
1:44:18 |
3 |
渡部 慶太 |
1:25:56 |
3 |
白坂 奈津子 |
1:46:40 |
4 |
大寺 真史 |
1:27:25 |
4 |
猪俣 美樹 |
1:51:04 |
5 |
生田目 修 |
1:28:55 |
5 |
今野 祥子 |
1:58:28 |
■出走人数290名、完走者283名(完走率97.6%) |
|
【2023 OSJ安達太良山トレイル10Kペアの部リザルト】
11Kペア |
総合順位 |
氏名 |
記録 |
1 |
岩根 潤、岩根 健人 |
2:05:58 |
2 |
渡邉 伊織、渡邉 剛 |
2:18:17 |
3 |
酒井 史江、酒井 章裕 |
2:27:59 |
4 |
石田 崇宏、石田 美枝子 |
2:51:19 |
5 |
一条 真左美、一条 淳一 |
3:21:43 |
■出走組数:5組、完走組数:5組(完走率100%) |
photographer Akihiko Harimoto