日本における100マイル
周回レースの先駆け
常夏の島、ハワイ・オアフ島。この島で行われる「H.U.R.T. 100(ハート100)」という100マイルレースがある。亜熱帯の森の中、1周32kmを5周するレースは、メンタルの強さが試される100マイル周回レースとして知られる。
このレースからヒントを得た、日本における100マイル周回レースの先駆けが、長野県小海町を舞台に行われる「OSJ KOUMI100」だ。
レースは、松原湖スケートセンターをスタートし、ロード、林道、トレイルを走って、再びスタート地点に戻ってくる。1周35km×5周回、トータル175kmのタフなレースは、100マイルレース完走を目指す100マイラーにとって、究極の耐久レースでもある。
7月。梅雨明けの小海には「KOUMI100」レースを試走するランナーが訪れる。ランナーたちの目的は、コースを把握し、実際に走ってみることで、本番に備える。といっても、この時は5周回するわけではないから、10月の本番になってみないとわからない。標高の高いこの地だけに、10月の初旬とはいえ、寒さも予想される。そして、なんといっても5周回するためには夜を徹して走ることになる。それだけに、それなりの練習と覚悟が必要なのだ。
周回ごとの
タイムマネジメントがカギ
2023年10月7日、天気曇り、気温5℃。まだ夜が明けきらぬ早朝、291名のランナーたちがスタート地点に集まってきた。スタートセレモニーの後、定刻5時に一斉にスタート。
まずは1周目。体力を温存してスローペースでいくか、それとも最初飛ばして後につなげるか。周回ごとのタイムマネジメントも重要だ。
2周目。まだまだ余裕が見られる。と同時に、このコースを残りあと3周するのかと思うと、げんなりする。特に、1周目を飛ばし過ぎたランナーはすでに疲れが出てくる。実際、5周目より2周目が一番きつかったという完走者の声もちらほら聞かれた。
3周目。ここが5周走るか、リタイアするかの分かれどころ。夜中に走ることになるし、真ん中の3周目ということで、メンタルが一番試されるところだ。見ているほうは、このコースをすでに2周走ったのだから、今までの努力がもったいない、がんばれ、と思いがちだが、当の選手にとっては厳しい選択を迫られる。とはいえ、3周目に入る前にリタイアした選手に悲壮感はない。ここまで走り切ったという満足感と、自分の限界をわかったから、逆にすがすがしい笑顔でレースをやめる人も多い。
4周目、ここからペーサーがつけられる。ペーサーの励ましとともに、あと2周。もちろん、苦しいけれど、気分は悪くない。
そして5周目。ここまできたら、もうあとはゴールを目指すだけだ。
完走率はわずか40%
レースの厳しさを物語る
5周目を終えて、ゴールにトップで入って来たのは、澤道人選手。タイムは25時間30分3秒。ずっと2位をキープしながら着実な走りを続けてきた。エイドではほとんど休まずに、ひたすら走る。そして5周回目のラストでトップを追い抜かしたのだ。ただ本人自身はいつ抜かしたのか覚えていないという。
一方、女子で1位に入ったのは、OSJレースの常連、冨澤いずみ選手。タイムは28時間32分26秒。2位に2時間近く差をつけて、笑顔でゴールに入ってきた。
5人の走者で行われるリレーは、チキンハートランニングクラブが、18時間55分19秒でゴールした。
出走者数291名、完走者数117名、完走率は40.2%。2日間に及ぶ長いレースが幕を閉じた。
取材・文/高橋 寿子
【2023 OSJ KOUMI100 リザルト】
男子 |
女子 |
総合順位 |
氏名 |
記録 |
総合順位 |
氏名 |
記録 |
1 |
澤 道人 |
25:30:03 |
1 |
冨澤 いずみ |
28:32:26 |
2 |
東条 叙宏 |
25:58:44 |
2 |
鎌倉 明子 |
30:35:43 |
3 |
酒井 亮児 |
26:12:39 |
3 |
高橋 瑞恵 |
33:02:19 |
4 |
高橋 淳平 |
26:52:19 |
4 |
村井 絢子 |
34:16:44 |
5 |
千葉 丈士 |
27:18:08 |
5 |
礒村 智恵子 |
34:27:24 |
■出走者数:291名/完走者数:117名/完走率40.2% |
|
リレー |
総合順位 |
チーム名 |
記録 |
1 |
チキンハートランニングチーム |
18:55:19 |
2 |
高松山グルグルクラブ |
21:45:47 |
3 |
駿河ぽんこっつ |
25:06:21 |
4 |
土偶練 |
25:13:08 |
5 |
青春コンプレックス’s |
25:56:52 |
■出走チーム数/11チーム/完走チーム数:11チーム/完走率100% |
photographer Akihiko Harimoto