毎年、9月上旬に行われるのが、OSJ安達太良山(あだたらやま)トレイル。土曜日に10Kレースと10Kペアが、翌日曜日に50Kレースとエキデンが行われる大会は、東日本大震災の時も、昨今のコロナ禍の時も中止されることなく続けられてきた。
この安達太良山トレイルのベース基地となるのが、開湯1200年の歴史ある温泉、岳(だけ)温泉だ。この岳温泉の特徴のひとつが、源泉から温泉街までの引き湯の距離の長さ。じつに8kmにわたって安達太良山の標高1500m付近の源泉から、山肌を伝う湯樋(ゆどい)を通って、約40分かけて温泉街まで湯が引かれている。源泉から温泉街まで流れている間に、管の中で自然に湯もみされ、硫黄の香り漂う強めの温泉(酸性湯)でありながら、肌にやさしいお湯を楽しむことができる。
レースで身体を酷使した後に入る温泉は極上の一言。さらに、安達太良のおいしい水を使って作られるお料理やお酒もまた、楽しみのひとつだ。それだけに、レースが終わった後は、もう1泊して岳温泉の魅力を存分に味わってほしい。
9月7日(土)、レース当日は予報通り、晴れとなった。
宿泊地の岳温泉から車で約15分のところにある、あだたら高原スキー場がスタート地点。岳温泉観光協会前からは、大会シャトルバスが7時30分と8時30分の2便、運行されている。なお、シャトルバスは事前予約制。エントリー時に併せて申し込む。
10Kレースは午前10時スタートなので、朝は比較的のんびり。受付は前日ではなく、レース当日の7時30分から9時30分までの間というのもうれしい。荷物預かりを済ませた後は、スタート時間まで体力を温存するのもよし、出展ブースを覗くのもまたよし。
今回、出展していただいたのは、キネシオロジーテープの元祖、New-HALE、ヘッドライトのLEDLENSER、UTMBのオフィシャルGPSウオッチ、SUUNTO、ALTRAのシューズをはじめ、シューズやウエアが揃うSTRIDE LABの那須店、そして初出展のMOUSE ON TRAIL、仙台にあるトレイルランニング・アウトドア専門店だ。オリジナル商品が多く、特におすすめは、軽量で高強度のエックスパック素材でできたトレランザック。そのほか、やはりエックスパック素材の色鮮やかなポーチやお財布などもあって、見ているだけで楽しい。補給食も販売しているので、ここで足りない分を調達しておくのもいいだろう。
スタート10分前の9時50分、選手整列が始まり、スタートセレモニーが行われた。まずは、岳温泉観光協会会長の二瓶(にへい)明子さんからご挨拶(ちなみに二瓶さん自身、トレイルランナーでもあり、以前、エキデンに参加されたこともある)。その後、レースにおける注意事項などがアナウンスされ、いよいよレーススタート。10代から80代までの男女合わせて424名が元気に安達太良山山頂へと向かった。
ここでコースの説明をしておこう。基本はあだたら高原スキー場から、標高約1700mの安達太良山山頂に上って折り返してくるというもの。スキー場を出たらすぐに林道に入るが、最初は道が狭いのでやや渋滞する。硫黄の香りがしてきたら、前方が開け、雄大な山々が見えてくる。黒い建物のくろがね小屋(現在、建て替えのため休業中)を抜けたら登山道に入る。大きな石がゴロゴロした細い道を上りきったら、その後はややざれた広々とした登山道をいく。山頂に到着した後は、大きな石が重なり合う細い道を下り、林道に出たら、さらに下って、ゴールのスキー場に到着する。
注意したいのは、途中、走行禁止区間があること。禁止区間にはスタッフがボードを持って立っているので、走行禁止開始区間から終了区間までは必ず歩いて通過すること。
この日は天候には恵まれたが、山頂付近は風が強く、飛ばされそうなほど。ただ、景色は最高で、レースでなければ、ゆったりしたいところだ。
そんな10K(14km)の山岳コースをトップで入ってきたのは、今年から本格的にトレランを始めたという、20代の新星、工藤友喜選手。タイムは1時間17分53秒。2位は栗原孝浩選手で、タイムは1時間20分35秒。3位は幡谷原太選手で、タイムは1時間20分42秒で、2位の栗原選手とはわずか7秒差だった。
女子は、5月に行われた奥久慈トレイルショート部門で3連覇、今回のレースでも優勝を狙っていたという沼田夏楠選手がトップに。2位にはOSJレースの常連、冨澤いずみ選手が、3位には青木莉楠選手が入った。
同日、行われたペア部門では、岩根 潤、健人親子が昨年に引き続き優勝。また、最高齢81歳の佐藤隆一さん(2022年、2023年レポート参照)は、昨年よりタイムを縮めて、今年もみごとに完走した。
14時12分、14時の制限時間には間に合わなかったが、スイーパー(選手たちの最後尾を追走し、安全に帰ってこられるようサポートするスタッフ)とともに最終ランナーが笑顔でゴールし、レースは終了。出走者数424名中、完走者数422名、完走率は99.5%だった。
取材・文/高橋寿子
【10Kリザルト】総合男子 | 総合女子 | ||||
総合順位 | 氏名 | 記録 | 総合順位 | 氏名 | 記録 |
1 | 工藤 友喜 | 1:17:53 | 1 | 沼田 夏楠 | 1:33:14 |
2 | 栗原 孝浩 | 1:20:35 | 2 | 冨澤 いずみ | 1:36:49 |
3 | 幡谷 原太 | 1:20:42 | 3 | 青木 莉楠 | 1:39:23 |
4 | 手嶋 真紀 | 1:22:37 | 4 | 白坂 奈津子 | 1:45:24 |
5 | 生田目 修 | 1:24:42 | 5 | 小幡 真紀 | 1:47:58 |
10Kペア | ||
総合順位 | 氏名 | 記録 |
1 | 岩根 潤・岩根 健人 | 1:49:08 |
2 | 高橋 駿・石森 晃 | 2:06:12 |
3 | 佐々木 拓・佐々木 実加 | 2:18:23 |
4 | 佐藤 有美・ 馬氷 貴生 | 2:22:23 |
5 | 庚塚 伊織・ 庚塚 祐紀 | 2:28:40 |